『インターネット図書館 青空文庫』 ~著作権の保護期間延長について~
ニューヨーク公共図書館は、単に本を借りるための場所ではない。名もない市民が夢を実現するための「孵化器」としての役割を果たしてきた。ここからは、アメリカを代表するビジネス、文化、芸術が数多く巣立っている。/『未来をつくる図書館 ―ニューヨークからの報告―』(岩波書店)より
『インターネット図書館 青空文庫』を読んだ。「青空文庫」と言えば、「インターネットの電子図書館」として、90年代後半よりインターネット上で展開している草の根オンライン図書館のようなサイトである。570名にのぼる「青空文庫工作員」と呼ばれる入力や校正を行うボランティアスタッフによって今も運営されている。本書はその青空文庫の創設メンバーの一人である、野口英司氏の編著によるものである。付録として青空文庫に登録されている4843作品のデータ等が収録されたDVD-ROMが付き、巻末には年表が付いている。
今でこそ「Wikipedia」(cf.「Wikipediaは果たして「オープンソース」なのか(CNET Japan)」)などのネット上のデータベースが社会的地位を得て、私たちもその恩恵に与ることが出来ているが、インターネットという地理的・物理的・経済的などの観点からでも、情報検索に関して優位性を持つ媒体・ツールが主流となってきた昨今において、ときに便利なサイトであった。
2000年12月31日にオープンした「インパク」自体は、時期尚早なものとしてイマイチぱっとしない印象のまま終了したが、その後のe-Japan戦略や電子政府に対する興味をわかせ、電子カルテや電子書籍の登場を促すこととなり、こうしてインターネットの急速な普及によって、人々の生活は一昔前と比べて一変した。
そんな折、「著作権の保護期間が50年から70年に延長」されるかもしれないという議論が、アメリカ政府などからの規制改革案が持ち込まれたことによって話題性を増し、一部世論をわかせている。青空文庫のサイト上では既に「著作権の保護期間延長に反対します」というバナーが貼られ、本書の帯の上でも同じコピーが謳われている。
cf.
・はてなリング「Stop! Copyright-Extend」
・「青空の行方/なにゆえの著作権保護期間70年延長か」(富田倫生氏)
・「やっぱり著作権保護期間延長を批判する」(白田秀彰 と ロージナ茶会)
・「ITmedia LifeStyle:特集:輸入音楽CDは買えなくなるのか?」
その昔、松岡正剛氏が漏らした夢、「ネットワーク上の一角に巨大な空中楼閣のような“図書街”を出現させる」(cf.「松岡正剛の千夜千冊『ヨーロッパの歴史的図書館』ヴィンフリート・レーシュブルク」)が、やがてリアリティを持って話されるようになり(cf.「「松岡正剛千夜千冊達成記念ブックパーティー」に参加!」)、実際にシンポジウムまで開催されたことがあった(cf.「NICTユニバーサル・コミュニケーション・シンポジウム」)ようだが、ネット上のソースやリアルな図書館が持つ蔵書が繋ぎ合わさった"図書街"が、市民が自由に膨大な歴史のデータベースを紐解くことができるような社会をもたらすとしたら面白いと思う。
本書の中にも、「著作権の権利は尊重する、と同時に、保護期間を終えた著作物は、みんなが自由に、手軽に、広範囲に利用できるようにしていく。これが青空文庫の目的といってもいいだろう」と書かれている。せっかく無料で読めるということを知らずに、学校側からの指示通りにお金を払って文庫を買っている学生なんかには是非勧めたいところである。
本書にも引用された青空文庫創設メンバーの一人、富田倫生氏による言葉が印象的である。
【著作権制度の目指すもの】青空のぬくもりは、誰もが共に味わえる。
一人があずかって、その恵みが減じることはない。
万人が共に享受して、何ら不都合がない。
世界の中における日本。この土地から青空を眺めやるとき、私たちは一体どこの上空まで仰ぎ見ることが許されているのだろうか――。意外に私たちの可視範囲にある青空はそんなに広くはないのかもしれない。
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