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『BRUTUS 天才たちに学べ!』を読みました。 ~天才時計師フランク・ミュラー~

今号のBRUTUSは、再び「フランク・ミュラー」特集であった。"再び"と言うのは、今号のトビラにもこの件に関する事件の発端をBRUTUS誌が書いたときの記事が小さく掲載されているが、私もその号を過去に一度採り上げている。

cf.「『BRUTUS さあ、ブックハンティングの季節です!』を読みました。 <後編> ~スイス時計業界の新星フランク・ミュラー~」

BVLGARIの時計の広告の対向面にあることを意識させるかのように、漆黒の表紙に合わせ、綴じ込み付録の体裁でその特集記事は組まれていた。主な内容は、フランク・ミュラーが、共同創業者兼共同経営者であったヴァルタン・シルマケス氏との確執の末、自身の起こした会社を離れるというものだった。

今号では、やはりフランク・ミュラー自身へのインタビューとして、和解に応じた後の経緯などが書かれてある。「FMVS(Flanck Muller,Vartan Sirmakes)の頭文字より」という新しいコンセプトのラインナップのことや、「メンズモデルとレディースモデルがあり、スチール製が888本、ゴールド製が88本の限定」で、それ自体が会員証となる時計の1号モデルがリリースされるという、「フランク・ミュラー クラブ・メンバー」の話などが書かれているが、後半、クロノグラフを作る方がトゥールビヨンウォッチを作るよりはるかに難しいと述べ、その後に興味深い発言があった。

 ――これは時計に限らず、ひとつの真理だから覚えておいたほうがいい。複雑なものを、たくさんの部品を使って複雑に作るのは、実は簡単なのだ!複雑なものを、少ない部品で簡単な仕組みで作るほうがはるかに難しい。部品数が増えれば増えるほど、故障も増えるのだ。  何ごとであれ、シンプルであることが一番大切だ!私は常にその一点に挑戦している。私のこの時計のように、本来、3つのムーブメントを使わなければ絶対に動かないはずの機構を、たったひとつのムーブメントで動かせたら最高だ!  これこそが成功というものだ!挑戦とはそういうことなのだ!
 ――なるほど、天才が考えることは一瞬常軌を逸した考えのようにも思う。がしかし、よくよく考えてみると、こうした考え方は我々ビジネスマンの中でも普段の仕事の中で、「どうしたら、これ以上複雑にならずに、組織を効率的に動かすことができるのだろうか?」と組織の形成、仕組み化(見える化)で悩む人は多いことだろう。  どんなに崇高な理想、多くの目標を掲げても、また、そのためにどんなに他人に自慢できるような複雑な数式を盛り込んだデータファイルを用いようとも、それがその組織で機能していなければ全く無意味である。スイスの天才時計技師フランク・ミュラーの言葉の中にさえ、思わず活路を見出したくなるような名言であると思った。

 他にも誌面では、フランク・ミュラーの私邸や所有するコレクション、工房などの紹介があり、「私は自分が好きなことしかやらない」という、フランク・ミュラー自身の言葉かと思われるコピーで特集を終えていた。

 ところで、BRUTUSがときにとても面白く感じることがあるのは、これだけ興味深い特集を組んでおきながら、記事がこの域で終わらないことだ。
 その後も「天才」をコンセプトに、世界中の天才たちの紹介を飽きることなく列挙し、ある種ストイックな博物誌的様相さえ帯びてきている。

 昨年10月に開かれた「第15回ショパン国際コンクールに最年少の17歳で出場、見事ポーランド批評家賞を受賞した」という生まれつき目の見えないハンデに往年の天才音楽家たちを彷彿とさせる神童ピアニスト、「全米最年少記録の12歳でシカゴ大学大学院医学博士・生物学博士課程合同プログラムに入学」したという現在15歳の少年、各面4列の複雑なルービックキューブを54.13秒でクリアしたという「ルービックキューブの世界王者」という19歳の少年、トリノ五輪では残念な結果(「着地失敗の今井メロ、腰椎ねんざと診断(2006年2月14日,YOMIURI ONLINE)」)であったが、渋谷駅前の巨大モニターに映し出されたハーフパイプのパフォーマンスには驚愕した今井メロ(18歳)さんについてのプロフィール・実績紹介、さらには歴代人気マンガに登場する天才キャラの紹介(笑)、締めには「もしかして、オレって天才?」などという、読者自身が診断できる天才診断チャートまで用意されている周到さ。もちろん私の結果は「凡人」である。人間、何事も中庸が大切なのである(笑)。

カテゴリー:書評

投稿者 cyberpoet : 2006年02月19日 13:00

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