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「エミール・ガレ展」(江戸東京博物館) ~文化と商業の複合芸術~

 本日は日曜日だったが有楽町で1件仕事があり、その合間に両国まで出向いて江戸東京博物館で開催中の「エミール・ガレ展」を観に行った。
 2004年9月23日のエミール・ガレ没後100年の節目として、以前にもサントリー美術館などで記念した展覧会が行われたが、その一環の展覧会であろうと思う。

 私が少し以前よりガレに興味を持つ理由は、もちろん、アール・ヌーヴォー期のパリにおいて万博で栄誉を授かり、あの一度見たらその作風を忘れない程に斬新で華麗なデザインのガラス工芸品を多く創ったからという理由もあるが、同時にそうしたラスキンやモリスの流れ(cf.「アート・アンド・クラフト運動」)を組む、固有価値と産業の進歩を生んだ「生活の芸術化による社会の進化」の動き(cf.『生活の芸術化―ラスキン、モリスと現代ー』)の歴史上にある手工業などをはじめとした職人の手による伝統的な文化――、すなわちモリスで言えばモリス商会で扱われたテキスタイル、ガレで言えばガレ商会におけるガラス・家具作品等の量産化による文化と商業の複合等が果たした社会的役割を知りたいと思ったこともあったろう。

 ガレ幼少時代より興味を持ち始めた博物学・植物学の知識は、やがて後年になって一つの造詣となって花開くことになる。熱を加えることで変幻自在に形を変えるガラス工芸の工程の中に創作芸術としての造形の可能性を見出したガレは、「アップリケ」、「グラヴュール」などの技法(cf.「北澤美術館 工芸技法」)を駆使して独自の世界を開拓してゆく。
 特に1846年、ナンシー生まれのガレが出会ったジュール・ヴェルヌが1869年に発表した大作、海底二万里の影響は多大であろう。小説の中で描かれるネモ船長率いる潜水艦ノーチラス号が出くわす未知なる深海の光景!芸術家のガレ青年を襲った感動は計り知れない。そこで見た深海の生物群の神秘的な姿形は、ガレの作風にも現れ始める。

 また、一時、高島北海などジャポニスムにも傾倒していたガレだが、そうした中、時代は幾度かの万博などで世界中が祭りに浮かれていた頃、当時ガレの祖国フランスの友好国であったロシアと、日本との間で日露戦争が勃発(1904年)。ガレ自身も死と隣り合わせかと思える程の病の淵にいた。

 江戸東京博物館1階にあるシアタールームでは、『美の巨人たち』でのガレ特集を放映していた。
 ここでピックアップされた作品が、ガレ晩年の名作、『手』(1904年)である。オルセー美術館他、世界に3点同じモチーフの作品が残っているという。最も出来の良いものがオルセー美術館所有のものということで、本展にも日本初公開として来ていた。

 今までもグロテスクな雰囲気の作品は多かったが、この「手」はグロテスクを通り越して、不気味ささえ覚える。海の波を彷彿とさせる青い台座から人間の手首だけが伸びている。その手に絡み付いている海草や貝殻から、この「手」が海の中から伸びているものと想像できる。

 死の間際、しかもガレの愛した日本とロシアとの間の大戦を目の当たりにし、「人間の死」を観念的に捉えようとした後年のガレが作り出したのは、悲痛に助けを求める、あるいは別れを告げようとした自身の「手」であったのか?深い悲しみに満ちた作品「手」を是非実際に見られることをお勧めする。

カテゴリー:美術展

投稿者 cyberpoet : 2005年02月06日 23:03

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