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Pen 「(特集)美しいブックデザイン」

※旧「楽天広場」時代のブログより転載。

 キオスクで最新号のPenを購入してみた。

 特集が「美しいブックデザイン」、つまり装丁特集である。私は特にこだわりを持って装丁を追いかけているわけではないが、本や雑誌を買うときに何となく目についたり、ときには装丁だけで無性に欲しくなったりすることもあって、我ながら不思議だなと感じることはあった。それはこのページ内の「古本」コーナーに書いたように、ある種のノスタルジーの影響かもしれないし、最近レベルがどんどん高くなる企業や個人のWebサイトのデザインの影響かもしれない。

 先日からよく引き合いに出しているSNSサイト「mixi」の中で、何の気なしに「装丁」というコミュニティを立ち上げたのは今年5月のこと。流行りと言えば流行りなのかもしれないが、まさかこんなマイノリティなコミュニティのテーマに、今日現在で720人以上もの賛同者が現れるとは思ってもいなかった。また、以前に文京区小石川にある「印刷博物館」を訪ねるきっかけをもたらしたのも、そのコミュニティに情報を投稿していただいた参加者の方からの情報が元だった。

 この印刷博物館には、館長である粟津潔氏が著名な装丁作家、兼デザイナーであることもあり、今回の「Pen」にも出ていたチェコの装丁などに関する本やコーナーも充実したものであった。

 こうしたふいの過熱は、以前にも触れたことのあった書店、ユトレヒトなどが、さらなるブームを築いていっているのかもしれないと思った。

 また、あいにく私は見る機会を逃したが、つい先日まで東京都庭園美術館にて、幻のロシア絵本 1920~30年代展という展覧会をやっていた。この時代はちょうど第一次世界大戦が終わり、世界が平和に向かって歩み出し始め、再び悲運の第二次世界大戦へと突入してゆく40年代初頭にかけての束の間の平安の時期だった。アーティストたちがせめて子供たちには平和な思いをと願って、こうしたやさしい雰囲気の絵本が多く作られたのだという。

 ときにはそれとは逆に、ヒトラー時代のデザインなどの本によれば、葉書やポスターなどにまで、ある種のプロパガンダを込めたデザインを施したりなどされたが、そうした動きは日本にもあって、少年倶楽部文庫などで書かれている山中峯太郎をはじめとした作家の作品にも戦時色の強かった時代ならではのテーマの著作もあった。

 それから、以前に訪れた「バラの宮廷画家 ルドゥーテ展」では、荒俣宏氏などが書かれるボタニカルアートの大著と言われる作品などの紹介もあったし、関連した話を挙げればキリがないのだが、ウィリアム・モリスのアーツ・アンド・クラフツ運動が、本をアートとして見る見方をもたらした話(cf.『美術手帖』「アートブックの魅力」~美しき本のカルト アートブックの二十世紀/海野宏)や、先の荒俣宏氏や、伊藤俊治氏が懐古する『プレイボーイ』誌のピンナップなどまで、そういう点でおよそ装丁というのは、商品であり芸術であるのと同時に、ある種の文化の投影だったのかもしれないと思ったりもした。

 以前に何度か紹介したことのある作品社発行のメルマガ「随筆名言集」に、かつて堀口大学氏が装丁について書いたときのものがあった。堀口氏が装丁について――、

きもの──と云つてはいけないかも知れない、むしろ身だしなみと云ふべきであらうか──(中略)装幀も是非それぞれの書物の内容の表情であつて欲しいと思つてゐる。

 と紹介していたことがあった。

 なるほど、と思いながら改めて今号の「Pen」を手にとってみる――。世界各国の珍しい装丁の本、可愛らしいものから奇抜なものまで、多くの装丁が並んでいる。コンピュータグラフィックが隆盛を極める現代において、人の温もりを感じさせるような装丁の本が、世界にはまだまだ存在するのだなと感じた。

カテゴリー:書評

投稿者 cyberpoet : 2004年11月17日 21:19

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