国立科学博物館 ~11月2日グランドオープンの新館に行って来ました!~
※旧「楽天広場」時代のブログより転載。
いつかもしかしたらそう遠くない時期に、私が著者としてこれらの鈍感なメカニズムの力を、私の望む方向に導いたように、誰かが馬鹿な人間大衆を世界や神に反対するように導くのではないかという恐れにとらえられた。(中略)ねえ、このようになると信じられるかい?/『ロボット(R.U.R.)』/カレル・チャペック
昨晩は、というより今朝の話だが1度帰宅した後昼頃まで寝てしまった。
上野にある国立科学博物館(通称「科博」)の新館が2日にグランドオープンしているという話を先日も日記に書いたばかりだが、来週まで待ちきれず今日は取引先の担当者を誘って一緒に見に行くことにしてあったので、昼過ぎから上野で落ち合った。
以前購入した、私の愛読誌の一つである『東京人(2001年2月増刊)「上野の森を楽しむ本」』の中では、「上野の森」とはゆかりの深い、安藤忠雄氏や日比野克彦氏、それから好きな作家にも挙げている池内紀氏や出口裕弘氏が寄せた随筆や推薦文が掲載されていたが、出口裕弘氏の文章の中にあった「少年のころ京成電車の沿線に住んだことがあり、終点ではなくその前の、今はなき「博物館動物園」という地下駅で降りて、むろん動物園にも行ったが、科学博物館へよく通った」という一節があり、自分もいつかは行ってみたいと思っていたところだった。
グランドオープンの告知が割と浸透していたのか、それともオープンしてすぐの日曜日だからか分からないが、とにかくすごい混み様であった!特に子供連れの方が多かった。確かに展示の仕方にはとても工夫がされていて(松岡正剛氏風に言えば「編集」が行き届いているということになるかもしれない)、例えば渋谷の「電力館」のように、見学者が体験できるコーナーがあったり、無料で提供されるICカードを持ち歩きながら館内を巡れば、展示内容のデータベースを後ほど「科博」のサイト内でID認証して履歴を参照することができるなど、リアル&ヴァーチャルを駆使した今風の企画も練りこまれていて感心した。
まだ行かれていない方のために展示内容を幾つか列挙したかったのだが、いつもさらっとしか見ない私でも、2時間で見切れなかった程の展示量(地上3階、地下3階)である。先に紹介した公式サイトを見るか、実際に見に行った方がはるかに理解できると思うので、ここでは簡単な紹介のみにして割愛しようと思う。
宇宙や地球の誕生に始まり、恐竜の絶滅についてや、生まれて初めてみるような陸海の動植物や細菌・寄生虫の化石や標本、人類の誕生・進化、民族の移動や文化の発達について、近代における産業や工業の発展史をパノラマ展示、化学や物理の解明を体験しつつ、大地震や火山噴火のメカニズムを巨大なスクリーンで見たりと、とにかくとても一日では頭に入りきらない情報量である。
宇宙や地球の神秘については、特に男性の方は無条件に好みそうなテーマだと思うのだが、個人的には『プロジェクトX』風な内容だった展示ブース(2階、「科学と技術の歩み -私たちは考え、手を使い、創ってきた-」)が特に楽しめた。機体の大きな零式戦闘機(零戦)や、旧国鉄のリアルタイム座席予約システム「マルス」の展示などは、かなり広いスペースがないと出来ない展示だろうと思うので必見である。
特にそれが、この上野公園内にある国立科学博物館で展示されているということに、自分の中の想像力を掻き立てられてならない。
以前も紹介した、初田亨氏の書かれた『百貨店の誕生』という本の中でも触れられているが、明治10年に開かれた内国勧業博覧会(この年の第一回から第三回目まで)の会場が、この上野公園だったのである。先述の『東京人』の1996年10月号の特集「明治がいっぱい風俗画報」の中でも、開催当時の会場全景の様子がイラストで紹介されていた。
内国というのは、万国博覧会の「万国(全世界)」に対して、日本国内での博覧会というのを意味しているのだと思うが、博覧会と言うくらいなので、当時最先端の科学技術や芸術、そして流行を多数紹介していたのだと想像する。
私はそうした日本の産業の一大発展史を、日本の産業の生誕の地とも言える上野公園内にある国立科学博物館の館内で、ある種箱庭的に整理整頓された空間を前に、簡単に一望出来るという嬉しさを感じることが出来た。
科博のパンフレットには、「自然との共存をめざして」というスローガンが掲げられ、「生き物たちが暮らす地球の環境を守り、自然と人類が共存可能な未来を築くために、私たちはどうすればよいか」と問いている。そしてその問いに対して、「みなさまと一緒に考えていきたいと思っています」と結んでいる。実際に見に行かれた方は、どのように感じたものでしょうか?
地球上の生物の数は、現在の科学で認められているものだけでも160万種と言われているそうである。人間はその中の1種にしか過ぎないのに、1種の内でも共存共栄の可能性に懐疑を持ってしまうような昨今の世相である。
私も数年前に突然思い立って、自然科学について書いた文章があるのだが、下段にエピグラム代わりに引用したギリスピーの思想に倣い、自然科学と人文科学のバランスをとるところから始めるためにも、この科博――、国立科学博物館は大いに活用できそうだなと感じた。
科学の学生は人間の研究から手をひいてよいでしょうか。高潔な心情をすて去ってよいでしょうか。/C.C.ギリスピー『科学思想の歴史 ガリレオからアインシュタインまで』
カテゴリー:美術展