「青山ブックセンター」閉店 ~東京からまた一つ、カルチャーが消える~
※旧「楽天広場」時代のブログより転載。
既に多くのBlogで話題になっているが、本日のヤフーニュースなどでの突然の報告に愕然とした方も多いことだと思う。
東京の文化発信基地のように、デザイン、建築、洋書系のお洒落な高級雑誌を多く置いていたり、六本木店ではときに明け方5:00過ぎまで営業を行っていたり、青山、広尾、新宿などの高級住宅街に開業していた東京流アカデミズムの顔とも言えるかもしれない青山ブックセンターが閉店を決めたことは、一部の人たちにある種多大なダメージを与えたに違いない。
この手の、お洒落な書店やカフェが流行ってますねという話は、私もちょうど少し前の日記(「『BRUTUS さあ、ブックハンティングの季節です!』を読みました。 <前編> ~新興書店の発信する新しいコンセプト~」)に書いたばかりだった。
「旅の本屋:BOOK246」や、「ユトレヒト」、「Village Vanguard」、「Hacknet」etc……、いわゆる「書店」というと、陰気臭いガリ勉の人や、インテリじみた文科系の人が集まるようなイメージを想起するが、そうした先入観を払拭――、どころか吹き飛ばすくらい斬新なコンセプトで、従来の「書店」に対するイメージを180度の転換させられることを余儀なくさせられたものだった。それは一昔前のカフェ飯ブーム、あるいは最近でもブームの続くカフェ系の文化とうまく融合し、一時の純喫茶や文壇バー、ジャズ喫茶のようなものさえ彷彿とさせるような、現代版サロンの形成に一役買っていたような気もする。
この青山ブックセンター(通称「ABC」)に関しても、昨年の日記(「澁澤龍彦責任編集、『血と薔薇』が復刊(祝)!」)で話題にしたばかりだったので、まさか閉店なんて!と正直驚いた。
確かに自分自身のことを言えば、本を買うのにわざわざ青山ブックセンターに赴いたのは、かつて1度か2度くらいしかない。最近では渋谷のブックファーストか大盛堂書店くらいが関の山で、せいぜい東京や日本橋、新宿や神保町へ足を伸ばした際に、古本街や紀伊国屋書店、三省堂、書泉グランデ、丸善、八重洲ブックセンターなどで用を足す程度で、たまにリブロなどがあると少し時間をかけて周るくらいのものである。
1度か2度しか訪れたことのない青山ブックセンターだが、その存在感は書店の中では、この東京中でもひときわ光る何かがあり、それが"全店閉店"と聞くと何だかとても淋しい気持ちになるものだ。それはまるで、東京からまた一つ、私たちが極自然的に誇りにしていた大切なカルチャーが失われたかのような錯覚にも陥る。
このニュースを聞いて、ふと思い出したことがある。
自分の愛読誌に挙げてもいる、『東京人』という雑誌で、今年3月号くらいに、「東京からなくなったもの 消えた街角、思い出の風景(200号記念)」という特集を組んだ号があった。
この号では、東京の名建築や映画館、喫茶店、鉄道などをはじめ、書店や古書店など、今までに失われてしまった昭和の息吹を、池内紀氏や出口裕弘氏や高田宏氏、飯沢耕太郎氏、鹿島茂氏、吉本隆明氏、大岡信氏、四方田犬彦氏、林望氏、久世光彦氏、坪内祐三氏、南伸坊氏、川本三郎氏、安西水丸氏、赤瀬川原平氏、高階秀爾氏、藤森照信氏、都築響一氏、隈研吾氏etc……、と昭和の東京の文化を語り出したら止まらない知の巨人たちや建築家たちの寄せた文章が並んでいる。
進む東京都心部再開発事業のかたわらで、ひっそりと消えゆく東京の顔を描写した秀逸の特集号だったと思う。その中に、銀座のイエナ書店閉店の話もあった――。
イエナ書店は、銀座にある高級洋書を取り扱う由緒ある書店として名前だけは知ってはいたが、このイエナ書店も青山ブックセンターより時期を早く、数年前に経営悪化のために閉店したものだった。
かつて芭蕉の唱えた不易流行ではないが、書店も戦略を構えて経営していかなければ明日にもどうなるか分からない世の中になったのかもしれない。
特にこれといったコンセプトを抱えているように見えない中小の書店に限ってはなおさらのことと思う。なにせ、あの青山ブックセンターでさえ閉店の道を辿ってしまうような世の中なのだから……。
カテゴリー:都市を遊歩する