『暮しの手帖 保存版3』(花森安治特集)
※旧「楽天広場」時代のブログより転載。
『暮しの手帖』と言うと、暮しの手帖社(前身は、雑誌『スタイルブック』というファッション誌を発行していた「衣裳研究所」)から昭和23年9月に創刊された雑誌で、未だに出版活動を続け、固定的なファン層を抱える人気雑誌で、この楽天を利用する中にも愛読者の方は多いかと思う。
私にとっては、「暮しの手帖」と聞くと、かつて読んだ、山本夏彦翁の『私の岩波物語』中での逸話と、学生時代に書店で手に取った『花森安治の編集室』(晶文社)という本で読んだくらいの知識しかなく、幼少時代を少年誌を読んで育った私としては、ただ漠然と「広告の一切ない珍しい雑誌」、それから広告を排除したイコールスポンサーのいない雑誌として、「商品テスト」なるコーナーを持った雑誌というイメージ程度があるくらいであった。また、松岡正剛氏のサイトでも論評があった。
『暮しの手帖』は、実は母が好きな雑誌だったようで、家でときどき見かけることもあるし、編集長を務めた花森安治らと共に創刊に携わった大橋鎮子(社長)さんの書かれたエッセイ集、『すてきなあなたに』などがあって、何気ないときに何気なくめくってみると、独特のエスプリに満ちた文章で心地よく感じるときもあった。
話を戻すと、今回採り上げた『暮しの手帖 保存版3 花森安治』は、雑誌というよりも、ムックの形式の本である。ムックの面白いところは、総じてアンソロジー的な構成となっているので、言わば入門編となり得ると同時に、熱烈なファンにとってもコレクションアイテムとなり得るところだと思う。
この本の中には、東京大学文学部美学美術史学科を卒業された編集長、花森安治氏の有名な『暮しの手帖』の表紙絵コレクションや、単行本の装丁、他にも自社広告のデザイン集や、挿絵用のカットやイラストレーションなどが特集され、戦後という時代をタイムリーに生きたことのない私でも、その独特なテイストにいくらかノスタルジックな雰囲気にさせてくれた。
さらには、先述した「商品テスト」に絡む有名な一連のエピソード群――、たとえば、「石油ストーブから出た火はバケツの水で消えるのか?」という"商品テスト"においての、暮しの手帖編集部VS消防庁の「水かけ論争」や、数々の花森語録――、たとえば、「ジャーナリストは二十四時間公人だ」「今度の戦争に、だれもかれもがなだれをうっていったのは、一人ひとりが自分の暮しを大切にしていなかったからだ」といったような名言(迷言?)などがたくさん書かれていて、花森安治氏というある面で戦後の異端者の人となりを伺うことができるようになっている。
私はもちろん、生まれてこのかた出版や編集といった仕事とは無縁だし、もちろん公私ともに暮しの手帖社とは一切関係のない立場にある。言ってみれば、単なる一消費者(生活者とも言い換えられるか?)でしかない。そんな私がこの本を読んで感じたことは、日本が(第二次世界大戦の)終戦を迎え、ちょうどメーカー各社が台頭し始め、モノ創り第一主義となっていった時代に、人々が望んだ「良い暮し」という時風に、現在の画一的な消費者迎合的それとはどこか違う異端性を発揮させた人なのだなということである。
また、先ほどは編集に携わったことはないと言ったが、広義の意味で「編集」を捉えれば、自分の今の仕事と全く無縁なものでもなく、もしそのような仕事に再び出会うことがあったなら、根底に一貫した強いポリシーのようなものを掲げて「編集」していきたいと思った。
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