テイト・ブリテン発世界巡回展 ヴィクトリアン・ヌード,―19世紀英国のモラルと芸術
今日は夏とは思えない程一日中涼しく、気分転換に散歩に出かけるにはもってこいの一日であった。
まず、東京藝術大学大学美術館で開催中の、「テイト・ブリテン発世界巡回展 ヴィクトリアン・ヌード,―19世紀英国のモラルと芸術」を見に行ってきた。
本展の情報は以前にも雑誌『芸術新潮(2003年6月号)』で見ており、前々から行こうと思っていた展覧会であった。内容の方は展覧会のタイトルからも想像が付くと思う。
「ヌード」や「ワイセツ」などという言葉はご法度だったヴィクトリア王朝時代(1837-1901)下のイギリスにおいて(1857年に猥褻出版物取締法が成立)、それ以前よりあったイギリス画壇の最高権威ともいえるロイヤルアカデミー(王立芸術院)の精神を根本から覆すような運動が起こった。ウィリアム・エッティを先駆とした、ジョージ・フレデリック・ウォツ、そしてフレデリック・レイトンやアルバート・ムーアらによるヌード作品の発表ラッシュである。
本展は、彼らの作によるヌード作品のオンパレードとなっている。本展の見どころは、もちろんそういったヌード作品が基本的に好きな人には全てが見どころだと思うが、そもそもヌード画であれば何もヴィクトリア王朝下の作品にこだわる必要がなければどこでも見ることができる。これはやはり、ロイヤルアカデミーによる画壇支配などの影響で、厳しい規制下にあった中で行われたある種の「闘い」として見ることが勧められる。先の『芸術新潮』での特集名も「ヴィクトリア朝の闘うヌード」であった。
「ヌードを巡っての闘い」は、日本でもかつて某写真家によって繰り広げられたこともあり、「猥褻と芸術の境目」は、絵画に限らずとも今も昔も変わらず微妙なところではある。
本展の一作品目に出てきたエッティ作の「快楽に針路を委ね」という作品は、昨今の暗いニュースさえ彷彿とさせた。この作品中では、全裸のニンフに自身の乗る船を囲まれた男が描かれている。男は薄笑いを浮かべながら、「はかなさ」を象徴したシャボン玉をつかもうとして体を伸ばし、背後から近づく、「波乱」を象徴した暗雲にさえ気がつかない様子。一過性の快楽に身を委ねていると、人生の破綻を招くという意味合いを含んでいるといい、直感的な象徴性に、当時のお堅い画壇を意識した作りを垣間見ることができるだろう。
つまり、厳しいヌード規制下においてはその強大な権力に抗うため、ヌード画にはある種の教訓などを含む必要があった。そういう意味での絵の醍醐味を伝えようとした向きも本展にはあったのではないか。
美術展のテーマとして、本展は自分にとっては新鮮なものに感じた。
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