街角考現学・第3部 「住基ネット導入問題」
国民の個人情報をオンラインで共有管理出来るという、渦中の「住基ネット」こと、「住民基本台帳ネットワークシステム」が5日朝、一部不参加の自治体を除き全国で一斉にスタートした。新聞などに写った「住民票コード通知表」と書かれた封書に、サイバーな匂いを感じて思わず固唾を飲んで、しばしその写真を見入る。
初日から各地でトラブルが起こったというニュースが各メディアを賑わせたようである。仮に「個人情報保護法」が制定されたとしても、もとより「法」とは破られるためにあるもの。こうして各自治体の不参加運動のラッシュを見ていると、国民の不安が法整備だけで収まるとは到底思えない。かと言って、設備投資などに既に血税何百億円も注いでしまっている当システムが、「やっぱりダメだった」というくらいの理由ですぐに廃止になってしまうのも哀しいジレンマである。
誰もが思う不安点として、悪意のあるハッカーなどの侵入、情報漏えいなどが挙げられると思う。しかし、実際パソコンの世界をよく見ていると、ハッカー自体が起こしている情報漏えいというのは極一部にしか過ぎない。「ハッカー」やら「ウイルス」という興味深い名称のみが、私企業の商売上隠された喧伝によってか一人歩きしたような結果にも感じる。
しかし私が言いたいのはそういうことではなくて、不可抗力によって情報漏えいをされてしまっているケースが実に多いということである。たとえば、私企業の配信するメールマガジンなどに登録すると、ときに個人情報を登録する場合がある。とすると故意でなくとも、誤ってその一部の情報を公開してしまうこともあり得るわけである。システム化出来ない部分は手動で配信するが、グループ化したメールアドレスをメーラの「BCC」欄ではなく、「CC」欄に入れて配信してしまったケースは何も中小企業だけではなかった筈。大企業と言っても担当者はやはり普通の人間であることには変わりない。全く過失のない人間なんていないのである。もちろん配信など、こちらから動かなければいいか?サーバー上で管理している以上、他人は見る気がなくても見えてしまうケースもある。でも、その場合はあまりにも管理者がずさんな場合だけである。
本当に恐いのはこういった過失以上に、担当者のモラルの問題だろうと思う。いつの時代でも、人のプライバシーについて知りたくなってしまう人間はいるものだ。ましてや、それを知ることによって、何らかのメリット(金銭的、精神的等)を得る立場の人間が必ず存在する。
クレジットカードの規格でさえも、日本で普及し始めてから40年以上、関連した事件の数に比べれば驚くほどの進化はしていない。むしろデビッドカードなどの普及が進み、クレジットカードが今後定着しないのではないか?という不信感さえ募りつつあるような感もあるくらいだ。
今度の「住基ネット」の住民票コードは、そのクレジットカードの番号の桁数よりもさらに少ない、11桁の数字で僕らの何もかもが、まさに生殺与奪の権限下において管理されることになる。
担当者のモラルによっていかようにも悪用できるシステム。もはやアニメやゲームの世界である。RPG系ゲームの主題の大半は、今挙げた懸念点――、すなわち私利私欲や悪い野心を抱いた人間が主人公というパターンが多い。「ハッカー」が金で雇われる時代が来るかもしれない。勧善懲悪モノの時代劇なんて、まさに風刺劇ではないのか?と思ってしまうくらい……。
ただでさえ最近は、この「システム」や「モラル」という部分に関して、私たちを嫌がおうにも不信にさせるような事故や事件が目立ってきているので、時期的にも国民が過剰反応をしてしまうのは否めない気がする。
完全な世界なんて、どこにもないのかもしれない。完璧な施行を望むのは野暮なことなのかもしれない。でも、私たちはきっと高望みはしていないのだろうと思う。ただ、問題なく事が済んでくれればいい――、それは本当にあまりにも高望みの願いなのだろうか?
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